2017.03.19 Kara Mercer

GFX 50S: 期待を上回るカメラ

Kara Mercer

アメリカ西海岸を拠点に活動するコマーシャルフォトグラファー・アートディレクター。ファッションやライフスタイル、トラベルフォトを得意とし世界中にクライアントを持つ。独特な感性から生み出される一つ一つの作品は際立ちながらも、一貫のストーリー性を保ち作品集としてまとまりも持つ。ミニマリズムの影響が垣間見える彼女の作品は人間の心理学の要素も取り込み、作品を見た人たちに一種のロマンスを感じさせる。タイムレスでナレーティブなビジュアルを作り上げる。 主なクライアントは富士フイルム、Huffpost、Conde Nast、Adobe、Ona Bags、Tour Alaska、Visit Jordan、Ebay、Lands End、Larsson & Jennings、J. Crew、Madewell、Zappos、Iams & Filsonなど。

富士フイルムが新しい中判ミラーレスカメラ「GFX 50S」の開発発表をして以来、このカメラを試してみたくてしょうがなかった。なぜなら、私の仕事の作法が変わるだけでなく、コマーシャルフォト業界全体に影響を及ぼす「ゲームチェンジャー」であると思ったから。実際にトライして分かったのは、私の期待値をはるかに超えていたということ。コマーシャル・フォトグラファーである私の主な仕事は、ポートレイト、ファッションとトラベル。このようなジャンルで求められるのは、Dレンジが広くてディテールが豊かな高解像の画像ファイル。クライアントの期待に応えられるようにするには、必然的に仕事に用いる機材への要求も高くなる。採用するカメラシステムは、使い心地がよく、操作が簡単で、階調豊かな高解像なファイルを実現してくれなければならない。

GFX 50Sの第一印象は「普段使っている一眼レフよりなんて軽いんだろう」。撮影を開始して分かったのは、持ち心地がとても良いこと。私の手のサイズをベースにカメラボディが設計されたのかと思ってしまうほど私の手にぴったりと密着する。フォーカスポイントを合わすには、タッチスクリーンやフォーカスレバーを使う。フォーカスレバーは普段使うXシリーズのカメラと同じなのですぐに慣れた。メニュー画面はXシリーズのを継承している。設定をいじるときに迷うことはない。おかげで私のワークフローはカメラの操作で惑わされることは無かった。スマホのように再生画像をフリック操作で確認できるのもとても良い。ロケ地などでテザー撮影していない時、クライアントに写真を見せる手段として特に便利。ファインダーを覗くのが困難なアングルの時は、X-T2の様にチルトする液晶画面を使って撮影をした。フォーカスの速度と精度はXシリーズと同じくらいな体感。色々と試してこのカメラは私が抱いた期待以上にパフォーマンスが良いカメラだということが分かった。

仕事で使うカメラを選ぶとき、「高解像な画像ファイル」はもう一つ欠かせない大切な条件。その点は心配無用。GFX 50Sは信じられないくらいシャープな描写性能を有する。5140万画素のピクセルカウントを侮れない。この大判センサーのおかげで、解像度が飛躍的に向上して、ダイナミックレンジも拡がり、ピントの精度も上がる。しかも、カメラ内であらゆるアスペクト比に変えることもできるの。世の中にある中判カメラは、大抵高解像な画像ファイルを実現しているだろう。だけど、このGFX 50Sが他の中判カメラと決定的に違うのは、コンパクトで軽量なボディサイズで同等な高画質なファイルを実現しているということ。しかも、今後さらに進化するであろう最先端技術を見添えた設計と聞いている。

GFXは、今までの私のワークフローを変えることなくより強固なものにしてくれた。色々な魅力が詰まったカメラシステムだ。特に、その描写性能とフィルムライクなスキントーンが私のお気に入り。おかげで、肌のレタッチを必要としなくなったので、撮影後の作業時間が半減した。この事実だけで仕事でどのカメラを選択するかは明白だ。編集作業時間が減った分、他のところに私のエネルギーを注ぐことができる。仕事のクオリティも上がるしクライアントもきっとハッピーになるはずだ。